崖の上に建つ住宅2棟が崩落した、大阪西成区の現場です。先月30日(の夜)から雨が降り続いています。大阪市は残り1棟の住宅を解体することを決めましたが、様々な問題が出てきています。
■悲鳴と轟音・・・大阪市西成区で住宅崩落
早朝の住宅街に、響き渡った悲鳴と轟音(ごうおん)。建物はゆっくりと崩れ落ち、現場周辺には大きな砂埃が巻き起こりました。
先月25日、大阪市西成区の住宅街で起きた崩落事故。
これが、崩落する前の現場の様子です。崖の上に住居が立ち並び、のり面には石垣が施されています。
最初に崩れ落ちたのは真ん中の住宅で、その3時間後に、左隣の住宅も崩れ落ちました。
がれきの中には、土砂にまみれた冷蔵庫や自転車などが、無残な形で横たわっていました。
そして、唯一、崖の上に残った住宅の下は、石垣がえぐれ、いつ倒壊してもおかしくない状況です。取材中にも、住宅の真下の土が、ポロポロと落ちているのが確認できます。
■崩壊の予兆・・・「きしむ音」「水漏れ」
現場を取材すると、崩落の直前に、数々の異変が起きていました。
最初に崩落した真ん中の家には、80代の女性と60代の男性の親子が住んでいました。警察によりますと、崩落する1時間前の午前6時半ごろ、住人は「ミシミシと家がきしむような音を聞いた」といいます。
異変を感じた住人は、すぐに自主的に避難したため、事故には巻き込まれませんでした。
警察に通報した人:「管から吹き出る感じ。水道管が割れて出るっていう感じ。ああいうふうな感じと、10センチか5センチ隙間があった、家と道の間に」
最初の崩落が起きる10分ほど前に撮影された写真です。建物が斜めに傾いているのが分かります。
よく見ると、壁面が地面から浮き上がっています。そして、電信柱の辺りが水が濡れているようにも見えます。
警察に通報した人:「これは大変だって、西成警察に電話したんです」
その直後、住宅が崩落したといいます。
現場に駆け付けた警察が、ガスの臭いを確認し、近隣住民約45人が一時避難する事態となりました。
また、崩落現場の斜め下にある保育所も臨時休園となりましたが、先月29日から再開しました。
保育所の周りでは、大阪市役所の職員が定期的に見回りをし、崩落の危険性がないか、警戒を続けているということです。
万が一、崖の上に残った住宅が倒壊した場合に備えて、保育所の中に破片が入らないよう、塀やシートを掛けるなど、対応を取っています。
■「石積み」劣化・・・工事振動原因か?
現場を訪れた、地盤工学の専門家は・・・。
近畿大学理工学部・河井克之教授:「一つは、かなり危険な場所に、盛り土をしているなという印象が一番大きかったですね」
事故が起きたのは「上町台地」と呼ばれる、大阪市を南北約12キロにわたって貫く丘陵地でした。
近畿大学理工学部・河井克之教授:「元々、高台で不安定な地盤に盛り土があった」「崩壊した場所の辺りに湧き水が出ている場所がある」「弱い土地だという条件は、そろっていると思うんですよね」
河井教授によりますと、現場は水を含みづらい固い地盤の上に土を盛り、「石積み」という石垣の壁で支えられていたというのです。
ところが、水はけが悪く、盛り土が水を含んで重くなり、そこへ経年劣化でもろくなった石積みが支え切れずに、倒壊につながったのではないかといいます。
盛り土とは別の可能性も、指摘されています。
崩落現場のすぐ下では、老人介護施設の建設工事が行なわれていて、この振動で崩落が起きていた可能性もありますが、現時点で事故との因果関係は分かっていません。
■残る1棟解体へ・・・「一両日中」は難しい
唯一、崖の上に残った住宅には、50代の女性が猫とともに暮らしていました。
大阪市の松井一郎市長は、費用は一旦、市が立て替えて、残る1棟の解体を一両日中に行なうと発表しました。
そして、先月30日午後、撤去を請け負った業者が、現地の調査に入りました。
市によりますと、安全を確保しながらの作業となるので、松井市長の言う「一両日中」の解体は難しいとしています。
先月30日の夕方、崩落現場に雨が打ちつけ、住宅の下でむき出しとなった部分から、少しずつ土砂が侵食されている様子が確認できます。
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