東京都内ではいま、非常に狭いスペースをビジネスや住まいとして活用する動きが広がっています。そこには働き方や暮らし方が変わってきた、現代ならではの理由がありました。

 11月28日から東京・新宿・品川の3駅でシェアオフィスの実証実験が始まりました。駅構内に設置されたのは、一見、電話ボックスのようにも見える1.2メートル四方の箱型のスペースで、中には机と椅子があり、電源設備やWi-Fiも完備されています。ボックス内は遮音性が優れているのでパソコンの作業などを集中してできるほか、電話でのやりとりも周りを気にせずに行えます。

 JR東日本の表輝幸執行役員は「働き方改革や生産性向上という社会的課題のサポートとして、駅の中というのは時間的な価値を高められる使い方ができるのでは」と語り、移動時間のロスが少ない駅ナカのスペースを活用することで、働き方改革をサポートする狙いを説明しました。2019年2月まで無料の実証実験を行い、利用料金などを検討していくということです。

 狭いスペースの活用は「住まい」にも広がっています。京王線・笹塚駅から徒歩5分の場所にことし3月にできたばかりのマンションを訪ねました。

 4月から入居している、お笑い芸人を目指す江森巧さんに話を聞きました。玄関から入ってすぐリビングルームというコンパクトな間取りは、なんと3畳ワンルームの「極狭物件」です。江森さんは「1人暮らしなので、全然不便は感じない。キッチンの限られたスペースも100円ショップで突っ張り棒を買って、自分で2段にして物置にしている」と語ります。

 面積9平方メートルほどの極狭物件ながらトイレとシャワー室は別々で、ロフトも付いています。限られたスペースを最大限活用し、何不自由なく過ごせると話す江森さんは「駅も近いし新築という点がいいなと思って決めた」といいます。この物件は新宿駅まで徒歩と電車を合わせて10分ほどで出ることができ、都心にありながら築・半年の真新しさで、家賃は6万4000円です。これは、周辺のワンルームの平均家賃(8万1800円)よりも2割以上安いのが魅力です。

 江森さんはお笑い芸人を目指していく中で、将来を見据えてこの立地を選びました。江森さんは「アルバイトや、繁華街の新宿・渋谷がすぐなので、生活する上でいいと思った。まだフリーターで全然芸人ではないので、いずれプロになれたらこの近辺でやりたい」と語ります。また、このマンションを経営する不動産会社・SPILYTUSの木本理恵さんは「東京の中心で相場よりも安い家賃の部屋に住んでもらうことで、余裕が生まれた時間やお金を、自分を磨くためや夢をかなえるために使ってほしいと思い、このコンパクトさに仕上げた」と話しています。

 近年は最低限のスペースさえあれば“狭くてもきれいで便利な都心に住みたい”という需要が増えているということです。こうした背景について、経済ジャーナリストの荻原博子さんは「テーマはコンパクト・気軽・手軽」として、「いまはパソコンとスマホだけで、ほとんど生活ができてしまう。物が少なくなったので、狭い所でもOKという人もいる。とりあえず仕事ができればいいというなら、余分なものはそれほどいらない。コンパクトにすることで、自分のお金と時間が増えるという発想」と分析しています。

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